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2016.08.15

人とロボットが共生・共創する未来へ

TEXT BY 萩田 紀博

人とロボットが共生・共創する未来へ

私はこれまで、大学時代は今はやりのニューラルネット、NTT在籍時には、文字・画像認識の研究を進めた後、カリフォルニア州立大学バークレー校にも客員研究員で滞在していた際には、視覚心理学を研究していました。

その後、「見る、聞く、話す、考える」など、ロボット単体の知能にまつわる研究マネジメントをしました。2001年にATR(国際電気通信基礎技術研究所)に移り、メディア情報科学研究所、知能ロボティクス研究所の立ち上げに携わり、ロボット、視聴覚・嗅覚・力覚、音楽知育メディアを含めたインタラクションメディアを研究するように。同時に、複数台のロボットとセンサーネットワーク、スマホなどがネットを通じて連携する「ネットワークロボット」の研究を立ち上げ、ロボット単体ではできない案内・接客・漫才などのサービスを研究開発してきました。

そして今の主な研究テーマは、人とロボットが共生・共創するための情報通信技術(ICT)と、人工知能とロボット技術のシステム融合です。

例えば、大阪南港を拠点に実際のロボットサービスを展開し、ロボットが人のやりかたを真似てビラ配りが上手になっていったり、やってはいけないこと/やってほしいことをロボット自身が理解したりしていくなど、社会常識を学習することを目指しています。

また、奈良先端科学技術大学院大学とも連携して、車いすの快適な自動走行や、独居高齢者とロボットとの楽しくなるコミュニケーション環境の創り方など、「快適知能」を研究しています。JSTの戦略的創造研究推進事業(CREST)においては、「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築」という最先端科学技術研究プロジェクトの研究総括をしています。

さて、来年度から始まる私のラボのテーマは、「人と機械が共生・共創するアートサイエンス作品を科学・創造しよう」です。

センサーネットワークと連携し、街角で案内をしたり、コンビニで商品を推薦したりするロボット。カワいいロボットとふたりぼっちのコミュニケーション環境をつくる。

ロボット1台に音声・画像認識を組み込んでいくと、システム処理が重たくなります。これを防ぐために、インターネットのクラウド上にこれらのアプリを使う時代になりました。そこで、ロボット、センサ、インターネットなどが連携して、ロボット1台では創れなかった新しい作品を創っていきたいと思います。

さらには、防犯カメラのように、環境に何台も設置されたセンサとも連携できるようになると、ロボットがショッピングモールで自ら動き、インタラクティブに人とも対話する作品を紹介することもできるでしょう。ATR(国際電気通信基礎技術研究所)の国際的研究者とも連携して、このようなロボットと共生・共創するアート作品を創っていきましょう。

古代ギリシアのtechneでは、アートも医学も音楽も同じモノでした。アートもサイエンスも元々は同じだったのです。このアートサイエンスを立ち上げるには、古代ギリシアから現在までに、いろんなアーティストが作品を創り、サイエンティストが新原理・概念を提案してきたこともわかりやすく学習してもらいたいと思います。授業や研究では、まず歴史に学びつつ、最新の科学技術も取り入れていきたいと思います。この先、今のスマホやパソコンなどが人工知能を持ったロボットに置き換えられていくことでしょう。そのとき、ロボットに対するアートのセンスがもっともっと必要になってきます。ロボットが人と共生・共創するアートサイエンスを実践していきたいと思います。

これからのアーティストは、全世界をまたにかけたグローバルな活躍ができることが当たり前になるでしょう。そのためには、I have to doという気持ちで英語や語学を覚えるのでは無くて、I am eager to doという気持ちで作品を創る過程にグローバルなコミュニケーションを採りいれた授業を皆さんと一緒に実践していきたいと思います。

先生が一方的に教える授業だけでなく、皆さんの英語や日本語などで意見・アイディアを出し合う環境の中で、授業や研究活動を進めていきたいと思います。歴史も知っている、科学技術もわかる、グローバルに羽ばたいていける、インターナショナルなアートサイエンティストになることを実践してみませんか?

 

CREDIT

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TEXT BY 萩田 紀博
1954年秋田県生まれ。ロボティクス研究者。慶應義塾大学大学院工学研究科修了。「国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所」所長として、人々の暮らしをロボット技術でサポートする研究開発を行う。同研究所が開発したロボットには、遠隔操作型アンドロイド『ジェミノイド』、抱き枕型通信メディア『ハグビー』などがある。

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